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第五章 一生懸命にパフォーマンスする姿3

last update Last Updated: 2025-01-17 15:11:59

ライブを終えて打ち上げが終わったのは朝方だった。

私と大くんは昼頃にベッドの上で目を覚ます。

そっと目を開けると大くんと目が合った。

「おはよう、美羽」

吐息のような声で囁かれた。

もう、誰かに過去を隠して生きていくことはない。

私と大くんらしく生きていければいい。

大くんの手がそっと伸びてきて頬を包まれた。そして唇が重なり合う。

唇が離れると熱を帯びた目で私を見つめる。

「……なんか、できそう」

「え、何が?」

「美羽を愛せそう。途中で駄目だったらごめん」

起き上がった大くんは覆い被さってきた。

そして私の首筋に吸いつく。チクっと甘い痛みが走る。

だけどその痛みは快感へと変わって、私は甘い声が溢れてきた。

「無理……しないで」

「好きだから、愛してるから、抱きたくなるんだ。すべてから解放されて安心して美羽を愛せるんだって思ったら、案外、早く治ったみたいだな。最後までできるか心配だけど……」

嬉しそうに笑った大くんの唇は、鎖骨にキスを落とし、胸に辿り着き、お腹の上に滑り落ちて、太ももにたどり着いた。

過去に抱かれた甘酸っぱい果実のような感情とは違って、甘い感情が込み上げてくる。

あの頃は、お互い子供だった。

でも、必死で愛していたのは間違いない。

何度も切れてしまいそうになる快楽の糸を、大くんは焦らしながら速度を上げていく。

プチンと切れた糸の先に繋がっていたのは、想像を絶するほどの素晴らしい世界だった。

――もう、誰にも邪魔をされずに愛し合えるんだ。

一つになれたね、大くん。

大くん、私を見つけてくれてありがとう。

「美羽、ありがとう」

私と大くんは汗と涙にまみれていた。二人を太陽が照らしキラキラとしていた。

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    美羽side結婚パーティーを無事に終えることができ、私は心から安心していた。 私と大くんが夫婦になったということをたくさんの人が祝ってくれたのが、嬉しくて ありがたくてたまらなかった。 しかし私が大くんと結婚したことで、傷ついてしまったファンがいるのも事実だ。 アイドルとしては、芸能生活を続けていくのはかなり厳しいだろう。 覚悟はしていたのに本当に私がそばにいていいのかと悩んでしまう時もある。 そんな時は大きくなってきたお腹を撫でて、私と大くんが選んだ道は間違っていないと思うようにしていた。自分で自分を肯定しなければ気持ちがおかしくなってしまいそうになる。 あまり落ち込まないようにしよう。 大くんは、仕事が立て込んでいて帰ってくるのが遅いみたい。 食事は、軽めのものを用意しておいた。 入浴も終えてソファーで休んでいたが時計は二十三時。 いつも帰りが遅いので平気。 私と大くんは再会するまでの間、会えていない期間があった。 これに比べると今は必ず帰ってくるので、幸せな状況だと感で胸がいっぱいだ。 今日は産婦人科に行ってきて赤ちゃんの性別がはっきりわかったので、伝えようと思っている。手作りのケーキを作ってフルーツの中身で伝えるというささやかなイベントをしようと思った。でも仕事で疲れているところにそんなことをしたら迷惑かな。 でも大事なことなので特別な時間にしたい。

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    「そんな簡単な問題じゃないと思う。もっと冷静になって考えなさい」強い口調で言われたので思わず大澤社長を睨んでしまう。すると大澤社長は呆れたように大きなため息をついた。「あなたの気の強さはわかるけど、落ち着いて考えないといけないのよ。大人なんだからね」「ああ、わかってる」「芸能人だから考えがずれているって思われたら、困るでしょう」本当に困った子というような感じでアルコールを流し込んでいる。社長にとっては俺たちはずっと子供のような存在なのかもしれない。大事に思ってくれているからこそ厳しい言葉をかけてくれているのだろう。「……メンバーで話し合いをしたいと思う。その上でどうするか決めていきたい」大澤社長は俺の真剣な言葉を聞いてじっと瞳を見つめてくる。「わかったわ。メンバーで話し合いをするまでに自分がこれからどうしていきたいか、自分に何ができるのかを考えてきなさい」「……ありがとうございます」俺はペコッと頭を下げた。「解散するにしても、ファンの皆さんが納得する形にしなければいけないのよ。ファンのおかげであなたたちはご飯を食べてこられたのだから。感謝を忘れてはいけないの」大澤社長の言葉が身にしみていた。彼女の言う通りだ。ファンがいたからこそ俺たちは成長しこうして食べていくことができた。音楽を聞いてくれている人たちに元気を届けたいと思いながら過ごしていたけれど、逆に俺たちが勇気や希望をもらえたりしてありがたい存在だった。そのファンたちを怒らせてしまう結果になるかもしれない。それでも俺は自分の人生を愛する人と過ごしていきたいと考えた。俺達COLORは、変わる時なのかもしれない……。

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